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第5回 DxO PhotoLabの教科書 第5回:世界最強のノイズ除去「DeepPRIME XD3」完全攻略

10月8日
読了時間: 8分

こんにちは、DxO PhotoLab 日本アンバサダーの藤原嘉騎です。


第4回で光学補正を扱いました。今回は、DxOのもう一つの核心技術「DeepPRIME」シリーズ、特に最新の「DeepPRIME XD3」を掘り下げます。高ISOで撮った写真のザラつきに悩んでいる方には、間違いなく一番読んでほしい回です。

ノイズ除去は「何と何を同時に解決しているか」

まず前提として、RAWファイルのノイズ除去は、単に「ザラザラを平らにする」だけの処理ではありません。RAW現像では、主に次のような処理が関係しています。

  • ノイズ除去:高ISOや暗部に発生する輝度ノイズ・カラーノイズを抑える

  • デモザイキング:センサーが記録した色情報から、フルカラー画像を生成する

  • 色収差補正:光の波長差によって発生する色にじみを補正する

従来のRAW現像では、これらを別々の工程として処理するのが一般的でした。まずデモザイキングで画像を作り、その後ノイズ除去を行い、さらに色収差を補正する、といった具合です。しかし、それぞれの処理が独立していると、前段階で発生したアーティファクトを次の処理が「本来のディテール」と判断してしまうなど、処理同士が干渉する可能性があります。

ここに、DeepPRIMEの大きな特徴があります

DeepPRIMEという発想の転換:ノイズ除去とデモザイキングを同時に解く

DxOが初代DeepPRIMEで導入した大きな考え方は、ノイズ除去とデモザイキングを単一のニューラルネットワークの中で同時に処理することでした。RAWデータから色を復元したあとでノイズを除去するのではなく、まだRAWの情報が残っている段階で、「これはノイズなのか」「これは本来存在するディテールなのか」を判断しながら画像を構築していきます。

この2つを同時に扱うことで、デモザイキング後に発生した偽色や細かなアーティファクトまでノイズ除去側が誤認する、といった問題を抑えやすくなります。

そしてDeepPRIME 3/XD3世代では、ここに色収差補正という第3の処理が加わりました。現在は、ノイズ除去+デモザイキング+色収差補正を一つのRAW変換工程の中で扱う仕組みへと進化しています。初代DeepPRIMEの中心は「ノイズ除去+デモザイキング」の同時処理であり、DeepPRIME 3世代ではさらに処理範囲が広がった、という理解が正確です。

DxOのノイズ除去技術の進化

DxOのノイズ除去技術は、HQ、PRIME、DeepPRIMEと進化してきました。ただし、PhotoLab 10で実際に選択できるノイズ除去モードは「標準」「DeepPRIME 3」「DeepPRIME XD3」の3種類です。

  • 標準:従来型のノイズ除去です。処理が軽く、通常の表示でも結果を確認しやすい方式です。高ISOや厳しい低照度ではDeepPRIME系ほどの処理能力はありませんが、ノイズの少ない写真や処理負荷を抑えたい場合には使えます。

  • DeepPRIME/DeepPRIME 3:機械学習を利用し、ノイズ除去・デモザイキング・色収差補正をRAW変換工程の中で同時に処理します。画質と処理速度のバランスに優れ、DxOは従来のRAW現像と比べてISO約2段分に相当するディテール向上をうたっています。

  • DeepPRIME XD3(eXtra Detail):DeepPRIMEの中でも画質を最優先した処理です。より深いニューラルネットワークを用い、特に高ISO・低照度・微細なディテールを重視する画像に向いています。BayerとX-Transの両方に対応し、DxOは従来方式に対して約3段分、場合によってはそれ以上に相当するディテール向上を説明しています。 DeepPRIME 3の単純な「上位版」というより、DeepPRIME 3=速度と画質のバランス/DeepPRIME XD3=画質を最優先という役割の違いで考えると分かりやすいでしょう。

DeepPRIME XD3:ようやく訪れた「シンプルさ」

DeepPRIME XD3のポイントは、単純に画質が上がったことだけではありません。XD3はまず、FujifilmのX-Transセンサー向けとして先行して登場しました。PhotoLab 9の初期段階ではXD3はX-Trans向けで、Bayerセンサーでは別世代のXD処理を使用する構成になっていました。その後、XD3がBayerセンサーにも拡張され、現在はBayer・X-Transの両方式で同じXD3世代の技術を利用できるようになっています。

これによって、「自分のカメラではどのDeepPRIMEを使えばいいのか」という判断がかなりシンプルになりました。処理速度を気にしないのであれば、XD3を第一候補として考えやすくなっています。

ノイズを減らしながら、必要なディテールをどこまで自然に残せるか
ノイズを減らしながら、必要なディテールをどこまで自然に残せるか


「画質最優先ならXD3一択」で本当にいいのか

処理速度やGPU負荷を気にせず、最終的な写真のクオリティだけを追求するのであれば、基本的にはDeepPRIME XD3を第一候補にして問題ありません。DxO自身も、DeepPRIME 3を速度と画質のバランス型、XD3を最高画質側の処理として位置づけています。

ただし、「XD3を選べば、すべての写真が必ずDeepPRIME 3より良くなる」という意味ではありません。現行のXD3では、高周波テクスチャやエッジの自然さ、アーティファクトの抑制も大きく改善されています。それでも写真によっては、葉・草・毛並み・髪・遠景の細かな模様などで、DeepPRIME 3とは質感の出方が異なる場合があります。特に低ISOで元のRAWが非常にきれいな場合は、両者の差が小さいこともあります。

画質を突き詰めたい場合は、次のような手順がおすすめです。

  1. まずDeepPRIME XD3を適用する

  2. 100〜200%に拡大し、細部(特に毛並みや植物の質感)を確認する

  3. 処理が強く・不自然に感じた箇所があれば、DeepPRIME 3と見比べてみる

どのモードを選べばいいか

「ISO6400以上ならXD3」といった単純な数値で区切る必要はありません。ISOは判断材料の一つですが、それ以上に重要なのは、その写真で何を優先したいのかです。

  • DeepPRIME 3:多くのRAWで、自然さと処理速度のバランスを取りたい場合。大量の写真を処理する場合や、元々それほどノイズが多くないRAWでは、DeepPRIME 3でも十分に高品質です。

  • DeepPRIME XD3:高ISO・夜景・星景・暗部を大きく持ち上げる写真・野生動物・大判プリント・微細なディテールをできるだけ残したい作品など、画質を最優先する場面に向いています。 また、低ISOだからXD3を使う意味がないわけではありません。大判プリントや、非常に細かなディテールを重視する作品では、低ISOでもXD3を試す価値があります。結局のところ、ISOの数字ではなく、「このRAWからどこまで情報を引き出したいか」で選ぶのが正しい考え方です。

書き出し時間とPCスペック

DeepPRIME系の処理速度は、使用しているコンピュータのGPU性能に大きく左右されます。特にXD系は高度なニューラルネットワークを使用するため、GPU性能が低い環境では書き出しに時間がかかります。

一方で、「XD3はとにかく重い」というイメージは、少し古くなっています。Bayer版XD3では、以前のXD2sよりニューラルネットワークの規模を拡大しながらも、実際の推論時間は大きく増えないよう最適化されています。とはいえ、高画素RAWを大量に処理する場合にはGPU性能の差がそのまま処理時間に表れます。

実際の運用では、次のような使い方がおすすめです。

  • バッチ書き出しは最後にまとめて行う:大量の画像を書き出す場合は、作業終了時や外出前などにまとめてスタートしておけば、待ち時間をほとんど意識せずに済みます。

  • 質感の最終判断は、実際に使用するモードで行う:DeepPRIME 3とXD3は、「軽いモード」と「重いモード」という違いではありません。ニューラルネットワークの処理結果そのものが異なります。そのため、最終的にXD3で書き出すのであれば、質感を判断するときもXD3の高品質プレビューで確認するのがおすすめです。現像中は通常表示で作業し、細部を判断するときだけ高品質プレビューで確認すれば十分です。

  • GPU性能はDeepPRIMEの処理時間に直結する:写真編集用PCを選ぶ際、DeepPRIMEを頻繁に使用するのであればGPU性能は非常に重要です。特に高画素RAWを大量に処理する人ほど、GPU性能の違いを体感しやすくなります。

「ノイズをゼロにする」が正解ではない

DeepPRIME XD3は非常に強力な処理ですが、最終的な判断基準は「どれだけノイズを消せたか」ではありません。重要なのは、必要なディテールや質感を自然に残しながら、邪魔なノイズをどこまで減らせたかです。

特に暗部を大きく持ち上げた写真では、元々RAWに十分な情報が存在しない部分もあります。そのような場所まで完全に滑らかにしようとすると、本来の質感まで失われ、結果として不自然な描写になることがあります。写真によっては、わずかな輝度ノイズが残っている方が自然に見えることもあります。

ノイズ除去の目的は、「ノイズを完全に消すこと」ではありません。見せたいディテールを守りながら、邪魔になるノイズだけを減らすこと。これがDeepPRIMEを使ううえで、最も大切な考え方だと思います。

ノイズを消すことだけを優先すると、毛並みの細かな質感まで滑らかになってしまうことがあります。大切なのはノイズの量ではなく、被写体に必要な質感が自然に残っているかです。
ノイズを消すことだけを優先すると、毛並みの細かな質感まで滑らかになってしまうことがあります。大切なのはノイズの量ではなく、被写体に必要な質感が自然に残っているかです。

まとめ

DeepPRIMEの本質は、単純に「強力なノイズ除去」ではありません。RAWの段階でノイズ除去とデモザイキングを一体化し、現在のDeepPRIME 3/XD3ではさらに色収差補正まで統合することで、RAWから画像を作り出す最初の段階そのものを高精度化している技術です。

そして現在は、処理速度と画質のバランスならDeepPRIME 3。処理時間を気にせず、最終画質を追求するならDeepPRIME XD3。という選び方が非常に分かりやすくなりました。

僕自身、作品として仕上げる写真では、まずXD3を基準に考えます。ただし最後に判断するのはアルゴリズムではなく、自分の目です。ノイズが少ないことよりも、その写真に必要な質感が残っているか。そこを見ながら使うことで、DeepPRIME XD3の性能を最も活かせると思います。

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次回予告

第6回は「光をコントロールする|『明るい写真』と『適正露出』の違い」です。白飛び・黒潰れを防ぎ、写真に立体感を与えるための露出補正、DxO Smart Lighting、Selective Toneの使い分けを解説します。

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